あけましておめでとうございます。
東京科学大学(Science Tokyo)としては初めての新年を迎えました。
本学の皆様、昨年は統合準備と統合推進にご協力、ご尽力いただきありがとうございました。
本学に期待を寄せてくださいました社会の皆様にも心より感謝申し上げます。そして皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
本年も大竹理事長の目指す「善き未来の実現」に向けて統合を推進しますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
今年の本学の課題は、なんといっても国際卓越研究大学の申請です。
よくお話しすることですが、「ゼロサム社会」という言葉があります。これは、富の総和(サム)が不変であるため誰かが得るとその分誰かが失うという社会です。これに対して「プラスサム社会」では富の総和がプラスになるので、誰かが得ても必ず誰かが失うということはありません。
統合直後、私たちは久々のインフレに直面しました。光熱水道費だけでなく建築費、その他多くの費用が増えています。他方、収入の増加が追い付かない状況で、国立大学はゼロサムどころかマイナスサムにさえなりかねない状況です。この中では、本学は産学連携や不動産活用など外部資金が本当に救いとなっています(が、これでも追いつきません)。
本学のミッションは「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」というものですが、このミッションを実現するためには、より多くのプラスサムが必要で、国際卓越研究大学になることは、必須の条件です。
国際卓越研究大学になるとどうなるでしょうか?
一例を挙げれば(そして単純化して言えば)、本学が国際卓越研究大学に認定されれば、外部資金に見合った補助が得られます。収入が増えるだけでなく、国際卓越研究大学としての新しい大学の体制の下で増えた富の再配分が行われることがもうひとつのポイントです。先に述べた「プラスサム社会」であってもプラスになった富の再配分方法によっては、格差の拡大する社会となるのは発展する国々にも見られる現象です。
私たちは、国際卓越研究大学の認定によって大学の体力である基盤部門を強化し、大学のミッションである「社会とともに新たな価値を創造する」ことを目指しています。そして、その結果「プラスサムの社会」を創るイノベーションを起こし、本学のミッションである「科学の進歩」と「人々の幸せ」とを探求したいと考えています。
しかし、その国際卓越研究大学に認定されることは容易ではありません。多くの有力大学との比較にさらされることになります。とはいえ、私たちにはそれぞれ伝統と実績のある理工学と医歯学の統合による巨大な化学反応のエネルギーがあります。これから両分野の出会いが順調に進めば、そのエネルギーが噴出していくと確信しています。
そのためにも、自由でフラットな対話を通じてより良い融和のシステムを本学に構築し、それを実施していきたいと思っています。
本学の学生、教職員、卒業生、そして期待を寄せてくださる社会の全ての皆様のご協力を切にお願い申し上げます。
2025年1月1日
東京科学大学(Science Tokyo) 学長 田中雄二郎