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「INDEST学生カフェ~起業について語ろう~」第4回

2024年11月22日 公開

2024年11月8日、東京科学大学田町キャンパスINDESTで「INDEST学生カフェ~起業について語ろう」を開催しました。東京科学大学として、初開催となる学生カフェ。記念すべき今回のゲストは、つばめBHB株式会社(以下、つばめBHB)代表取締役 CEO 中村公治さん。「研究で社会を変えるには!? アンモニア合成触媒 社会実用化への挑戦」をテーマに、クロストークを行いました。

中村さんによるプレゼンテーションからはじまり、「これまでのキャリアについて」、また「つばめBHB CEO就任後と展望」や「大学発スタートアップとして急成長の秘訣」など、学生ナビゲーター:弊学 物質理工学院材料系材料コース修士課程2年の森翔也さん(北野政明研究室所属)からの質問をうけての対話形式で進行しました。

会社紹介・事業内容など

農業や環境ビジネスにおいて、重要な役割を果たすアンモニア。つばめBHBの革新的なアンモニア合成触媒技術について説明し、同社の技術が、既存のハーバー・ボッシュ法と比較して、より低温・低圧で効率的にアンモニアを生産できること、また、小型化と分散型生産が可能であることなどをふまえ、企業としての成長戦略、資金調達についても触れました。技術開発と人材確保には大規模な資金が不可欠であり、競争に勝つためには迅速な行動が重要と指摘し、現在の株主構成や資金調達の戦略についてもご紹介くださいました。

キャリアについて―学生時代から商社マン、VC時代を経て

学部生時代までは野球に打ち込んでいたという中村さん。当時はほとんど勉強しなかった! と仰る傍ら、社会人になってからは、学び続ける日々だったようです。環境ビジネスに興味を持ったのも、その将来的になくてはならない事業をやりたい、という想いによるものとお話しくださいました。商社時代は営業や貿易実務、与信管理について、メーカーでは技術について、またベンチャーキャピタリストとしての目線など、さまざまな立場で身につけた経験が、今のすべてに活かされているのは、常に学びの姿勢で挑まれてきた証のようでした。

つばめBHBとの出会いについては、「最初は出向だったんのですが、この会社を本当に好きになって」と語り、「この会社のためなら、何でもやれるって気持ちになったのですよね」と熱い気持ちを隠さずに話してくださいました。好きだからこそ朝から晩まで働ける、職場に自転車で通える場所に引っ越してしまった、と語る姿に会場は和やかな笑いに包まれました。

大学発スタートアップの課題と戦略

大学発スタートアップの課題と成功戦略について、技術だけでなく、ビジネスモデルの重要性や、研究者と経営者の役割の違い、顧客との密接な関係構築の重要性も説きました。

ディープテック企業における資金調達とビジネスモデルの構築について、「ディープテックは、お金が大量に 必要なんです」と述べ、「技術が良くても、それだけじゃ勝てない。ベンチャーは総合格闘技みたいなものですから」と加えられました。同社では、起業初期にはライセンスビジネスを考えていたものの、「すぐにそれだけでは収益の限界があると気づいた」と言い、「今は小型プラントを立てて、EPC(エンジニアリング・調達・建設)のEPを行うモデルに舵を切っています」と実際に事業を進める中でビジネスモデルを変えてきたことを紹介。

初期から投資家として参画した事業会社 との関係についても、「事業会社 が株主になってくれたおかげで、良い シグナル効果が生まれました」と、信頼関係が生むビジネスの効果についてお話くださいました。また、研究成果の社会実装の難しさに話が及ぶと、「ディープテックのような技術は、市場に出すまでに膨大な手間がかかる」と前置きし、日本における技術と市場のギャップについて指摘し、「技術だけではなく、市場のニーズを理解して、それをシーズに変える力がないと上手くいかないと思います 」と、ビジネス化の難しさにも触れました。

質疑から

ニーズをシーズに変える力

「研究者としての成果をビジネスに活かすには?」といった問いには、「研究とビジネスは両立が難しい。細野先生も 経営には口を出さない方針。一方で、東京科学大の先生方とは情報交換とディスカッションを頻度よくしています。サイエンティストとビジネスパーソンの知識や視点が異なるからこそ、お互い得られることがある。それぞれの得意分野を活かすのが良いと思います」と述べ、産学連携の要でもある信頼関係の大切さを強調しました。

人材採用と育成

人材の採用と育成について、中村さんは「大学や大学院を卒業したての 若い人たちには学ぶ力と挑戦する力が大事」と断言。特に「いくら優れていても、ずっと不満を言っているような人はベンチャーに向いていない。ベンチャーでは、新しいことに挑む力が必要です」と述べ、自社の文化を育てるための採用基準についても明かしました。「採用エージェントには僕自身がプレゼンをして、『つばめは面白い会社なんだよ』と自分の言葉で伝えるんです。まずはエージェント担当者につばめの良さを理解してもらい候補者に自信を持ってつばめを紹介してもらうようにしています」と語り、「リファラル(社員推薦)も活用して、いい仲間を増やしています」との工夫も披露しました。

中村さんから、学生のみなさんへのメッセージ

質疑応答の最後に投げられた、ロジカルとエモーショナルのバランスについての問いには、「(エモーショナルは)意識して出すものじゃない。好きだから自然と出てくるんです」と答え、「寝るまでずっと仕事が頭にあっても平気。この会社が好きだから、好きなことをやっているからできる」とコメント。そして、「これから社会に出ていく皆さんには、好きなことを見つけることが一番大事」との力強いメッセージで締めくくりました。

ナビゲーター森さん&ゲスト中村さん

おしまいに

今回の「INDEST学生カフェ~起業について語ろう」は、中村さんの生き生きとした経験談や、社会実装に向けた挑戦へのリアルな語りが、参加者にインパクトを与える場となりました。新しいことに挑戦する文化、やりがいを共有する仲間との関係性、なにより「好きなことを続けられる」環境づくりの大切さなど、道を拓いていくために何が必要か。技術力や資金調達の話にとどまらず、「好きなことを仕事にする」という情熱のもつ力が伝わる本セッションは、学生のみなさんにも新たな視点をもたらすものになったのではないでしょうか。

ご来場のみなさま、ご登壇の中村さま、ナビゲーターの森さま、ありがとうございました。また告知や当日の会場設営など、お力添えくださった多くのみなさま、またご協賛くださるみなさま方にも深くお礼を申し上げます。

(テキスト・ポスター・サムネイル CM・URA 小川由美子/写真撮影 URA 藤井武郎 )

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