Science Tokyoの学生スタートアップが「チャレンジ!!オープンガバナンス2024」にて総合賞を含む三冠受賞

2025年7月14日 公開

東京科学大学(Science Tokyo)環境・社会理工学院 融合理工学系 西條美紀研究室の滝沢直さん(博士課程3年:参加時2年)が代表を務める学生研究スタートアップチーム「D-attend」が、自治体の課題に対して市民・学生が解決策を提案する政策共創コンテスト「チャレンジ!!オープンガバナンス 2024」に東京都中野区と参加しました。全110チームが参加する中、3月16日に行われた最終公開審査イベントでファイナリストとして発表し、オープンガバナンス総合賞、ハーバード大学アッシュセンター特別イノベーション賞、オンライン投票銀賞を受賞し、三冠という栄誉に輝きました。

オープンガバナンス総合賞受賞で登壇した参加メンバー
オープンガバナンス総合賞の賞状
ハーバードイノベーション賞の賞状

D-attendが提案したアイデア「中野区発!地域コミュニティ高齢者つながるプラットフォーム イロイロ生活カルテ」は、地域の高齢者コミュニティに蓄積する生活情報を可視化・共有することで、早期の支援や介護負担の軽減を実現しようとする仕組みです。

着目した課題は、心身の問題を抱えた地域の高齢者の早期発見です。D-attendでは2年間にわたって500件以上、中野区でのヒアリングを実施しました。そこから見えてきたのは、高齢者が自分から支援を求めづらい現実と、そうした高齢者と行政が接点を持ちにくいという構造的な問題です。高齢者自身は「周囲に迷惑をかけたくない」という思いから体調の変化や困りごとを言い出せない傾向にあります。一方、行政側が支援窓口に相談に来ない高齢者にアプローチしようとしても、手段には限界があります。

その結果、実際には予兆があったのに専門的な対処ができぬまま状況が進行し、転倒などによる怪我で入院して初めて心身の問題が明らかになり、復帰が難しくなってしまうケースが多く見られます。心身の問題を抱えた高齢者をできるだけ早期に発見することが求められているのです。

そこでD-attendは、中野区で活動する地域主体のコミュニティに着目しました。そこに日々蓄積されている「なんとなく調子が悪そう」「最近姿を見かけない」といった情報、いわば暗黙知を、カードとアプリによる受付や簡単な体調アンケート、主催者によるメモ機能を活用して記録・蓄積。異変を感知すれば地域包括支援センター等の連携専門機関と即座に連携できる仕組みを考案し、開発と実証を進めてきました。

こうした取り組みを通じて、自ら困りごとや不調を言い出せない高齢者への早期アプローチが可能となり、結果的に医療費・介護費の大幅削減にもつながる可能性があります。審査員からは「『異変の暗黙知』を活用するというアイデアが良い」「モデルとなる実例があるのが良い。地域コミュニティが持つ情報の収集・共有を単にシステム化するだけでなく、ツールを使う人々に寄り添った丁寧な仕組みを実装してほしい」といった評価を受けました。

環境・社会理工学院の西條美紀教授(右端)とともに酒井直人中野区長(右から2人目)に受賞報告

現在この取組みは、中野区の複数のコミュニティにて実証実験が進行中です。今回の受賞をきっかけに、中野区とD-attend、Science Tokyo西條研究室の3者は共同研究契約を締結し、酒井直人・中野区長への報告会も実施しました。今後は高齢者の地域活動を起点に、いざという時にいち早く気づくことができる仕組みの構築が期待されます。

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